年末調整の準備について
今回は、11月頃に会社の経理が行う業務として、年末調整の準備について解説します。「1/31 源泉徴収票の交付」において年末調整の簡単な流れのみを説明しましたが、ここでは年末調整の準備からその納付にいたるまでの一連の流れを少し掘り下げながらみていきたいと思います。
年末調整のための必要書類の準備と確認について
年末調整は、年末の忙しい時期に短期間で行わなければならない業務です。これを正確、迅速に処理するためには事前に必要な書類をチェックしておくことが大切です。 またその年の年末調整の作業前に前年分の年末調整資料を事前確認しておくことが作業の効率化に役立ちます。それでは年末調整のために必要な書類をみていきます。
<年末調整のために必要な書類>
(1)1年分の給与と賞与の資料(賃金台帳など)
… 年末調整では従業員の一人一人について、当年分の毎月の給与などと差し引かれた社会保険料の額及び源泉所得税額を集計します。
(2)年の中途で入社した従業員で前職のある場合は、前職分の源泉徴収票
…実務上、入手に時間がかかることが多いので、入社時に事前に預かっておくとよいでしょう。入手できない場合は、その従業員の年末調整は行えません。
(3)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(資料1参照)
…配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、及び勤労学生控除を行うための資料となりますので、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出がされているかどうか必ず確認します。
資料1)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
(4)給与所得者の保険料控除申告書
…生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(申告分)及び小規模企業共済等掛金控除を行うための資料です。
資料2)給与所得者の保険料控除申告書
(5)給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
…令和2年分より基礎控除の見直しと所得金額調整控除の創設があり、これに伴って年末調整において基礎控除又は所得金額調整控除の適用を受ける場合「給与所得者の基礎控除申告書」又は「所得金額調整控除申告書」の提出が必要となりました。そしてこれらに従来の「給与所得者の配偶者控除等申告書」を加え、3種類の申告書を兼用する様式に改められました。
資料3)給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
(6)給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
…住宅借入金等特別控除を初年度に受ける場合には、従業員個人で確定申告が必要です。さらに、金融機関からの借入金の年末残高等証明書(原本)を添付してもらってください。
実務上、これらの資料は11月末くらいまでに受領が完了していると、12月中の年末調整事務がスムーズにできます。
過不足額の精算と納付
年末調整の計算が終わり各従業員の年税額が決まったら、納めすぎになっていた従業員には差額を還付し、また徴収不足の従業員からは差額の徴収を行います。
なおこの還付の方法は、
- ①本年最後の給料支払で精算する方法
- ②給料計算とは別に、現金等で還付額を支払う
など処理は会社によって異なります。
そして、精算が終了したら過不足の精算を加味した所得税徴収高計算書(納付書)の記入を行います。
②の精算のしかたによった場合には、当年最終月(12月支払分)の納付書は資料4のようになります。つまり本来毎月の給料分(12月は賞与の支払もあります)として納付すべき所得税額から、年末調整で還付した金額を控除した金額を納付することになります。
資料4)所得税徴収高計算書(納付書)
年末調整の手続き一巡をおさえておきましょう
ここで紹介した内容やそれ以外の詳細は、手引き書(「年末調整のしかた」)を入手して年末調整事務にあたってください。本稿が読者の年末調整手続きの理解の一助になれば幸いです。
【参考】- 令和5年分「年末調整のしかた」 国税庁