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3/15 所得税の青色申告承認申請書の提出

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所得税の青色申告について

今回は、所得税の青色申告制度について取り上げます。毎年3月15日は、青色申告承認申請書の提出期限日(一部例外あり)です。そこで青色申告制度の内容を説明しつつ、その申請上の注意点も解説していきます。

所得税の青色申告制度って何?

所得税では、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行う人は、税務署長の承認を受けた場合に控除額の多い青色申告の申請書を税務署に提出(青色申告)することができます。青色申告以外の申告を「白色申告」といいます。

青色申告であるということは、正規の記帳制度(複式簿記)に基づく信頼性の高い申告書であるという証明になります。後述するように青色申告者には様々な特典を用意して税額の低減を図れるようにしています。

※「不動産所得」とは土地や建物などの不動産、地上権などの不動産の上に存する権利の貸付けなどによる所得です。また「事業所得」とは不動産所得となる不動産貸付業以外の事業(商売)から生ずる所得であり、「山林所得」は山林の譲渡(材木の売却収入など)による所得です。以下では簡便化のため「事業所得」のみがある場合を前提に、青色申告の解説をすすめます。

青色申告を適用するための手続きについて

まず、事前に所轄の税務署へ「青色申告承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受けなければなりません。この「青色申告承認申請書」の提出期限は原則、その年の3月15日までとなっています。
例外としてその年の1月16日以後新たに事業を開始した場合は、開始した日から2ヶ月以内とされています(=事業を開始して2ヶ月以内に提出が必要です)。

なお税務署長は申請期限内に申請書の提出があった場合には、その申請につき承認又は却下の処分をすることになりますが、その年の12月31日までに処分がないときは承認があったものとみなして、その年分から青色の確定申告書を提出することができます。

青色申告が認められた場合は、

  • ①帳簿書類に一切の取引を記帳すること
  • ②確定申告書に貸借対照表・損益計算書及びこれらの所得の金額の計算明細書(=「青色申告決算書」)を添付しなければならないこと
  • ③一定の期間、帳簿書類などを保存しなければならないこと

などの義務が課されています。

では、青色申告者となった場合には、どのような特典があるのでしょうか?
まず、いちばん大きい特典は「青色申告特別控除」です。これは事業所得の場合、所得は収入-必要経費=利益(所得)として算出されますが、この所得から最高65万円(65万円の控除が受けられる要件に該当しない場合は10万円)を控除するというものです。所得は住民税や国民健康保険の算定の基礎ともなりますので、この控除の節税への効果は大きくなります。

次に大きい特典は「損失の繰越控除」です。これは事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除することができるとするものです。
白色申告者も災害の場合の損失など、一定の場合には損失の繰越ができる規定はありますが、青色申告の場合は要件に合致すれば無条件で繰越控除が可能です。それ以外にも一定の場合に税額を還付する「繰り戻し控除」の適用を受けることもできます。

その他「専従者給与の必要経費算入(配偶者に実際に支払った給料額を必要経費にすることができる)」、「低価法の採用(棚卸資産の時価が下落した場合に取得価額が時価を下回った額を経費にできる)」などが可能になります。

資料1)所得税の青色申告承認申請書

資料1

資料2)所得税青色申告決算書

資料2

申請及び承認を受けた後の注意点等について

この青色申告の申請にあたって、まず気をつけるのは、事業を開始したら「青色申告承認申請書」の提出期限はいつか?を必ず確認しておくことです。事業を開始すると税務署への書類はこの申請書だけではありません。期限に余裕を持って各種提出書類を準備するようにしましょう。
もし、この申請書の提出が遅れると青色申告の適用が丸1年遅れることになり、余計な税金を払うことにもなりますし、様々な特典を得られるのも1年遅れになってしまいます。

そして、承認を受けられたら、正しい帳簿を作成しておくことが重要になります。
帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽しまたは仮装して記載したり、帳簿を正しく保存していなかったりした場合には、青色申告の承認取り消しを受ける場合があります。承認取り消しの場合には通知書が来ます。過去の年分につきこれが来てしまうと、その年にさかのぼってその承認が取り消され青色申告の特典に係る部分の過去の税金を支払うことになりますので、注意が必要です。

事業を始めたら提出書類は早めに提出

今回は「青色申告承認申請書」の提出の場合でしたが、これ以外にも開業時(事業の開始時)には「個人事業の開業・廃業等届出書」や「所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書」、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」のほか、対税務署以外にも種々の提出書類があります。
それぞれ提出期限がありますので、無用な不利益を受けることのないように早めに準備し、提出するように心がけましょう。

【参考】
  • 「令和5年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」 国税庁
    …必ず該当する各年のパンフレットをお使いください。