小山 満也Oyama Michinari 紹介事業部 部長
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国立大学工学部中退後、公認会計士を目指す。
2002年より弊社に入社し、派遣のエージェントに1年、その後は一貫して紹介のエージェントに携わる。
1万人を超える求職者の支援実績があり、自身が公認会計士を目指していたことを活かし、業務面やカルチャーフィットを含めたミスマッチの少ない紹介に強み。
夢をあきらめるほどのショック
大学は長野県の国立大学の工学部電気電子工学科に通っていました。なぜこの学科を選んだかというと、将来は自動車メーカーに就職し、開発の仕事をしたいと漠然と考えていたからです。
ある日、大学で他大学の著名な教授(工学系)の特別講演を聴講したときのこと。そのなかで「あなたたちのレベルでは、大学院に行って、もっとちゃんと勉強しないと、メーカーの開発職に就くのは夢のまた夢。入社はできても営業になるくらい」といった言葉がありました。まだ若かった自分が、多少うがった受け取り方をしてしまったというのはあるかもしれませんが、そのように聞こえました。
いま思い返せば、この教授の言葉の意図もわかります。学生に奮起を促す意味で「もっと勉強しなさい」ということがおっしゃりたかったのでしょう。
親になにを言われたわけでもなく「自動車メーカーに就職するという夢」をみつけて、それを目指してこれまで勉強をしてきた当時の自分としては「君たちはメーカーの開発職にはなれないんだぞ」と言われたことに対して、ひどくショックを受けてしまいました。目の前で重たいシャッターが下りてしまったようなイメージです。
だとしたら、「自分で自分のやりたい仕事を決められる職業」は何なのかを考えました。結局、人に雇われていたら自分のやりたいことはできないんだなと思い、このまま大学を卒業し、普通に就職することに疑問を感じ始めたのです。
会計士試験の挫折
人に雇われていては、自分のやりたいことができないとするなら、何かしら手に職をつけたいと考え始めるのは必然でした。
会計士という資格を知ったのも、この頃です。人に雇われるのではなく、自ら仕事を切り開いていくというイメージにあこがれました。目標にしていた自動車会社への就職という夢も急速に色あせ学校にも行かなくなり、結局、4年半籍を置いた末に中退することに。
大学を辞めて何もしないわけにもいかないので、公認会計士の資格取得に向けて専門学校に通うことを決めました。実家のある茨城から水道橋まで、毎日電車での通いです。この1年間は、人生でも一番勉強したという実感があり、なんとなく「受かるだろうな」と高を括っていたところもありましたが、結果はボーダーぎりぎりでの短答式試験不合格。
ここで引き返せないという思いもあり、もう1年、当時のテキストで独学での勉強を続けるも2年目の試験も惨敗。3年目の勉強をスタートすることとなりましたが、さすがにもう親のすねもかじれません。短期講座に通うにも、まとまったお金がいるので勉強の邪魔にならない範囲で働くことにしました。
どうせ働くなら会計事務所などで働きながらの方が、勉強が頭に入るのではないかと思い、会計士がやっている派遣会社に派遣社員として登録すべく面談にでかけた日のこと。当時のわたしは会計士試験を受けるつもりだったので、簿記の資格は持っていません。しかも実務経験もないわけです。「会計事務所での仕事はご紹介できません」ということをやんわり言われ、しょんぼりして帰ったのを今でも覚えています。
ところがその派遣会社から、その日の夜に「明日また来てほしい」との連絡がありました。翌日ふたたび訪ねると、なんとのその派遣会社で働かないかとのお誘いでした。おわかりかと思いますが、その会社がジャスネットコミュニケーションズだったわけです。
求人情報の言外を読み取る
ジャスネットでの仕事は、とにかく面白かったです。
時間はあっという間に過ぎていきました。会計士試験の勉強をしていたので、借方貸方はもちろんわかりますが、実際に経理の現場で何が起こっているのか、そこで働く人たちが何に困っているのかの話を聞けたのは興味深かったです。座学と経理の仕事はイコールではないものの、点と点がつながる感覚がありました。
仕事を始める前までは「簿記の知識があったところで、人材派遣や人材紹介の仕事の役には立たないのでは…」という思いはありました。それを打ち消してくれたのは、当時の社長である矢島の「エージェントは企業の人事以上、経理未満の実務知識は持っておくように」という言葉。簿記や経理実務の知識は、そこで働く方々との「共通言語」となるわけです。
会計士試験の勉強をしていた下地があった分、企業での求人のヒアリングの際は他のエージェントが聞かない論点を掘り下げていました。実務の知識では経理部で働いている方には敵わないものの、自分の持っている会計知識を活かせるという点では、仕事の理解は他の同僚よりも早かったと思っています。
たくさんの案件に携わることで、何の経験が何年、何の業務を何年といった単に条件のヒアリングや、通り一遍の応募要件は読まなくとも、どのような人が欲しいのかがわかるようになってきました。
登録者の方々のスキルだけではなく、残業時間に融通が効くかとか、その個人のキャラクターやものの考え方も含めて、その企業に合うかどうかまでを感じ取るまでやっていると、クライアントからは「小山にまかせておけば、いい人を紹介してくれる」と思ってもらえるようになってきました。多くの会社の部課長に会っていますと、会社によって、合う合わないを見極めているポイントが見えてきます。表面的な求人項目の条件が合うからといって、人もマッチするものではないのです。
応募要件や条件だけを渡されて「これに合う人を紹介してください」といった単なる求人情報と人とのマッチングには興味がありませんし、やる気もでません。
情報に含まれないものを読みとってのマッチング、条件だけでは選考の対象にならなかった人の紹介にこそ、やりがいがあるのです。このように、求人情報の言外を読み取るといったことはAIにはできないことなので、プライドを持ってやっているところです。「求職者(登録者)に寄り添う」ということ
これまでの仕事人生で常に頭の片隅にあったのは、冒頭にお話しした学生時代の教授の言葉でした。伝えたかった言葉の意味に間違いはないものの、言葉だけが先行し、学生に寄り添う「気持ち」の部分が少し足りなかったというのがわかってきました。
登録者に寄り添うために、まずは企業と求人の内容を知ることが最初のステップだと思っています。
まずは、その求人を望んでいる方の生の声を聞くことが第一。それはその企業でその仕事をやっている方から直接話を聞くことになります。
人を採用できていないことでの現在進行形の苦労、先の工程で滞ってしまうことは何なのか、できていないが本来やりたいことは何なのかなど。「このような人が採用できたら助かる」という、その方すら気づいていないニーズをヒアリングするわけです。これは人事窓口の方のお話だけではつかみきれません。
本来は採用に困っているご本人が人を探せるのが理想なので、エージェントとしては少しでもそれに近づけるよう、価値観と思考回路が一致するまで話します。例えば、学歴は重視しないと言いながらも、そうではないケースもあります。このようなことも読み取り、理解して帰るわけです。
なぜそこまでのヒアリングをするのかというと、単に登録者の方の転職先が決まればよいという感覚ではなく、決まったあと、その人が「その会社に転職してよかった」と本心から思ってくれないと意味がないからです。ジャスネットがゴールに定めているのは、利益をあげるだけではなく、人を探している企業と求職者のそれぞれが本心から満足してもらうこと。その前提がないと、この仕事をしている意味がないと思っています。
例えとしてお話ししたことがあります。登録者の面接に同席させてもらったときの話です。企業の方とのやり取りを聞いていて、この方の志向性と求人が合っていないことがわかりました。
面接後、「この求人は細かい方向性が違ったので、辞退してまた違う求人を探しましょう」と言ったことがあります。その方は、いままでの人材紹介会社の担当で辞退を勧めた人は一人もいなかったと驚いていらっしゃいました。これは求職者から信頼を勝ち得たからこその言葉として記憶に残っています。
繰り返しになりますが「どこでもいいから、入社してくれればいい」ということではないのです。そのような思いは相手に伝わるという気づきの瞬間でもありました。自分の利益ではなく、求職者の利益のためにやる、当たり前のことを当たり前にやる、その人の立場で考えるということ。
わたしが身をもって体験したことですが、人の言葉には、時に岐路に立つ誰かの人生を変えてしまう力もあるのかもしれません。このように人から信頼を受けられるようになったことこそが、大学時代に受けたショック以来、20年以上の長い時間かけて「人に寄り添うこと」が何なのかを突き詰めてきた答えだと思っています。
わたし個人の話として、私利私欲を捨てることで実践してきた「人に寄り添うこと」を、少しでも感じていただけたかなと思っています。紹介事業部の長として、「ジャスネットのエージェントは誰にお願いしても、人に寄り添う力が凄い」と思われるように、部内に浸透させていくのが目標です。
それには、日ごろからの人に向き合う姿勢、価値観だけではなく、経理の実務知識、簿記の知識、労働法、世の中の採用動向、業界知識…など、ノウハウはあればあるだけよいでしょう。何度も冒頭の話に戻りますが、言葉一つで人の一生は変わってしまいます。自分の経験を糧に、登録者やクライアントに寄り添う気持ちをもてる組織を育てていきたいです。
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