■ 関西エリアの中小企業とは
中小企業の定義は様々あると思いますが、ここでは売上規模1,000億未満、未上場の企業を想定してお話させていただきます。
関西エリアは伝統的な産業と先端技術が融合する企業を多く抱える地域で、大阪府だけでも上場企業は440社もあります。「天下の台所」と呼ばれる大阪府は商業の中心地として発展を続けており、現在では卸・小売業、製造業などが大きな割合を占めています。
製造業では機械・部品メーカーなど主にBtoB取引を主体とした企業が多く、輸出も積極的に行っています。
大企業に負けない先端技術などで世界的なシェアを誇る中小企業も多く、全体的に堅実な経営で安定しています。
中小企業といっても様々で、全国的に知名度が高い製品を持つ企業、宇宙開発関連の部品を製造しているメーカー、国産のドローンを製造・販売している企業など、業種は多岐に渡っています。
また、グローバルニッチと呼ばれる世界的シェアを持つ企業が多くあることも、関西エリアの上場企業と同じ特徴かと思います。
中心は大阪ですが、日本を代表する貿易港である神戸には商社が多く、京都では大学発の起業なども活発であるなど、それぞれの地域性もあります。
■ 関西エリアの中小企業経理職の特徴
(1)未上場企業の経理業務
上場企業の経理業務との大きな違いは、経理の人数が少なく、業務が細分化されていないために幅広く横断的に経験が積めるという点です。ポジションにもよりますが、決算などの財務会計業務から原価計算などの管理会計業務まで、一気通貫で経験することができるというのは、経験を幅広く積みたい人には良いでしょう。
(2)経営者の金庫番としての業務
経営者との距離も近いため、「経営者の右腕」としての役割を求められることも多いです。経営者が判断を下すために必要な数字、書類などをいかにスピーディにタイムリーに提供できるかが重要です。
極端な例ですが「今日、支払い期限の取引を支払った場合、残高がゼロになる」などの情報を経営者に提供し、資金はどうするのか指示を仰ぐなどといったことでしょうか。経理として、まずはそういった状況であることを把握しており、的確に経営者と連携する能力が求められます。
(3)経理業務だけではないプラスα
ポジションによっては経営者と一緒にプロジェクトを運営したり、総務人事業務も兼務するような企業もあります。
業務効率の推進、海外取引が多い企業では英語を使っての業務や金融機関との折衝など、やる気次第では若手のうちから経理プラスαの幅広い経験を積むことができるのも魅力です。
(4)中小企業経理職の年収
中小企業は年収が低いイメージがあるかもしれませんが、スタッフクラスの採用のみならず、課長・部長クラスの中途採用も多く、年収レンジは幅広いです。
(5)将来的なキャリアステップ
そもそも経理人員が少ないため、良くも悪くも早い段階から経験を積むことが要求されます。したがって、段階的にステップを踏む企業よりも早期にスキルアップができます。
裁量権を持って業務に取り組めることも魅力の一つです。
また、新卒で入社することが難しいような上場企業でも、中小企業で経験を積むことによって、転職できる可能性も高まります。
中小企業であれば、幅広い経理経験を若手のうちから積みながら、さらにマネジメント経験もある貴重な人材になるといったキャリア形成を図ることができます。
■ 関西エリアの中小企業の求人・転職動向
(1)求人数の推移
2023年の大阪の有効求人倍率は1.30倍となり、2年連続で上昇しています。
エージェントとしての体感的には製造業、商社系の求人が多い印象です。
経理のニーズは変わらず堅調ではありますが、近年では、管理会計・税務やITスキルに強い方などの求人相談が増えてきています。収益向上のための原価、販管費の高度化や業務改善を伴うDXの推進などを受けて、会社内部を見直す動きが活発になっているからではないでしょうか。
製造業や商社系が多い関西エリアではありますが、観光業も盛んなため、サービス業などでの求人需要も依然として高い状態が続いています。
(2)関西エリアの中小企業、採用の傾向
上場企業に比べると、経理部門はコンパクトな組織体制を取っているため、経理+αの幅広い業務に携わることへの意向、社風に合うかどうかを重視する傾向が強いです。
また40、50代のマネジメント人材では、上場企業での豊富な知識と経験を持った方や中小企業などで幅広い経験を積まれてきた方が好まれる傾向にあります。
(3)関西エリアの中小企業で求められる人材
中小企業であっても、最も求人が多いのは、20代後半から30代の経理経験者ですが、未経験の方から、経理部長クラスまで幅広い層の求人があります。
毎年新卒採用を行っているところは少ないため、20代の場合は経理の基本的なスキルは抑えたうえで、社風とのマッチングや人柄、やる気などのポテンシャルを重視される傾向があると思います。
また組織の高齢化により世代交代を図りたいという企業も多く、40~50代のマネジメント経験者も求められています。マネジメント候補として求められているのは、以下のような方です。
- 幅広い経験と高度な知識を有している
- 様々な経理業務を経験している
- 経営層と協働して仕事に取り組んだ経験がある
- コミュニケーション能力が高く、社内調整力、交渉力がある
■ ジャスネットコミュニケーションズでの近年のご紹介事例
ジャスネットコミュニケーションズは経理職未経験の方でも、その方の強みを分析し、多数の中小企業への転職をお手伝いしてきました。ここでは一例として、中小企業の経理職へ転職した成功例をご紹介します。
(1)20代 女性 日商簿記2級・経理未経験~創業 約100年のプラントエンジニアリング企業(年商:約30億円、従業員数:約100名)
◆ポイント
接客経験があり対人対応力が高く、就業されながら簿記2級に合格されました。経理への意欲もしっかりお伝えできたことが高評価。
(2)20代 男性 日商簿記2級・経理未経験~食品メーカー(年商:約50億円、従業員数:約400名)
◆ポイント
接客販売から転職し、事務業務経験と日商簿記2級取得に取り組まれてこられました。経理への意欲と行動、事務業務の経験が高評価。
(3)30代 女性 税理士事務所~レンタル・シェアオフィスを手掛ける不動産企業(年商:約10億円、従業員数:約60名)
◆ポイント
決算・税務申告書までを経験。事前に業務内容をイメージされていたことで、企業理解・意欲もあり、将来の中核人材として期待を受けたられたことが高評価。
(4)30代 男性 上場グループ企業経理経験者~グローバル専門商社(年商:約900億円、従業員数:約2,800名)
◆ポイント
本社の経理業務に加えて、子会社の決算含む経理業務全般のご経験。主任昇進という社内評価や向上心、海外志向も高評価。
(5)40代 女性 サービス・製造等複数企業での経理経験者~業績好調な高収益IT企業(年商:非公開、従業員数:約30名)
◆ポイント
決算から管理会計・財務・労務・総務・システム等、幅広い経験あり。
社長直下のポジションで、意向もくみながらご活躍されていたことが高評価。
(6)40代 男性 機械メーカー経理責任者~医療機材メーカー経理責任者(年商:約50億円、従業員数:約100名)
◆ポイント
年次決算までの実務経験。マネジメント経験から経営層と近い距離間での対応経験があり。柔軟に対応してこられた仕事の進め方等が高評価。