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はじめてでもわかる!経理の仕事

Point 1
経理の仕事は、会社の活動を数字で表すこと

日々の活動を記録し、経営者に情報を提供

経理の仕事をひと言で表すなら、「会社の活動を数字で表すこと」。会社はお金を稼ぐために、日々いろいろな活動を行っています。その企業活動に関する情報を「取引」として集め、「簿記」という方法によって記録し、集めた数字を見て改善点を考えたり、年度の終わりに「年次決算」として財務諸表を作成したりもします。

この一連の流れを1年間というサイクルのなかで繰り返していくのが経理の仕事です。具体的な業務としては、「仕入の管理」「売上の管理」「現預金の管理」「給与や保険料の計算」「税金の計算」などがあります。

社長が会社を運営するには、「今、どのくらい儲かっているか?」「どれくらいの資産があるか?」といった、会社のお金の動きを正確に把握する必要があります。そのための情報をタイムリーに提供するのが、経理部門の役割です。一般に経理というと地味で影の薄い仕事と思われがちですが、実際には、社長の経営判断を左右する、とても大切な役割を担っているのです。

会社での経理の役割

経営者

経理がまとめた決算書などから会社の売上や資産状況をチェックする。

経理担当者

企業活動にともなうお金の動きを記録して、貸借対照表や損益計算書にまとめ、経営者に提出する。

そのほかの社員

仕入や商品の製造・販売、サービスの提供、それにともなう出張や会議などさまざまな企業活動を行う。

経理の主な仕事

仕入に関するお金を管理する

適宜
  • 仕入管理
  • 買掛金の管理 など

仕入に関するお金を管理する

適宜
  • 売上管理
  • 売掛金の管理
  • 請求書の発行
  • 領収書の発行 など

仕入に関するお金を管理する

毎日
  • 現金の管理
  • 預金の管理
  • 小切手の管理
  • 手形の管理
  • 経費の仕訳・精算 など

会社の財務状況のまとめ

月1 年1
  • 月次決算
  • 年次決算

会社の資産をお金に換算する

月1 年1
  • 減価償却 など

給与や社会保険料を計算する

月1 年1
  • 仕入管理
  • 年末調整
  • 社会保険料の計算と納付 など

税金を計算して納める

月1 年1
  • 源泉所得税の計算と納付
  • 法人税の計算と納付
  • 法人住民税の計算と納付
  • 消費税の計算と納付 など

Point 2
会社の規模によって、経理の仕事の範囲は異なる

中小企業の経理の仕事は、オールラウンダーが求められる

「経理の仕事」とひと口にいっても、会社の規模によって、ひとりの経理担当者が担当する仕事の内容は異なっています。上場企業のような大きな会社では、経理部のような経理専門の部署が置かれ、多くの人が経理の仕事に携わります。仕事の量も業務範囲も膨大になるため、一人ひとりはある特定の範囲の経理のみを行う、専門職タイプの仕事になります。

中小企業では、専門の部署がないことも多く、総務部の中の数人で、ときには総務も人事も経理もひとりがすべてを兼任している、といったケースもあります。特に従業員が30人以下の規模の会社では、ひとりの経理担当者が、日々の現金の管理や経費の処理から給与計算、決算をこなし、ときには経営者へのアドバイスまで求められることもあり、幅広い知識と柔軟な対応力が必要になります。

また業種によっても、経理の仕事の内容に傾向があります。小売業では在庫管理や支払管理にまつわる仕事が多く、製造業などではコスト管理につながるお金の管理の重要性が増す、といった具合です。

会社での経理の役割
  • 自分の仕事はここまでと考えず、幅広い役割をこなす姿勢を身に付けよう。
  • 経営者の方針や考え方を意識しながら、データや書類を管理しよう。
  • 少ない人数でもスムーズに経理業務を行えるよう、年間スケジュールを立てておく。
  • 前期の決算からの変更点や課題、法制上の変更点などを把握し、対策を立てておく。
  • 税理士と何でも相談できるような信頼関係を築いておく。
会社の規模による経理の仕事の違い

大企業・上場企業

売上高、取引件数、従業員数などさまざまな面で規模が大きいため、経理部門の業務が財務担当、決算担当など分業されていることが多い。

中小企業

規模によっては経理・総務などの管理部門を一部署またはひとりで対応。税務などは会計事務所に任せていることも多い。財務業務も重要。

上場子会社・関連会社

親会社と同等、または親会社が独自に求めるレベルの決算を行い、内容を報告する義務がある。親会社の経理担当者と話ができるだけの知識が必要。

外資系企業

海外の親会社への決算報告と、日本国内での税務申告用の決算という、2つの目的に合わせた仕事が必要となる。外国語力も必要。

会社の業種による経理の仕事の違い

小売業

簿記で習う「物を仕入れて売る」という流れに一番近く、買掛金管理がポイント。支払業務が煩雑になることも。

製造業

製造にかかるコスト管理=原価計算という業務が発生する。原価計算と予算との差を分析し、原価管理を行う。

不動産業

扱う対象が大きく、プロジェクトのスタートから完了まで長期にわたることも多いため、会計年度をまたいで原価計算処理が行われる。

金融業

お金が商品=在庫のため、ほかの業界との違いが大きい。また、各種管理項目や経営に対して、非常に厳しくチェックされる傾向がある。

Point 3
1日、1カ月、1年で、経理の仕事を整理する

経理の仕事の基本サイクルを頭に入れておこう

経理担当者は、1日、1カ月、1年という一定のサイクルに沿って仕事をしているので、それぞれのサイクルを押さえておくことが大切です。

1日単位では、日々の取引をすべて記録していきます。備品の購入や出張旅費の精算といった小口現金の精算、伝票の入力、帳簿の入力などを行います。

1カ月単位では、会社の1カ月間の動きをまとめて、日々の仕訳の入力にミスがなかったかをチェックします。また、前月と比べて売上はどうか、ムダな経費を使っていないかなどを確認します。給与の計算、社会保険料の計算をするのも毎月の仕事です。

年単位では、1年間の活動の集大成ともいえる決算書を作成します。決算をすることで、会社のその年の儲けや現在の財務状況を把握することができます。ほかにも、商品の棚卸しや減価償却費の計算、税務申告、株主総会のための報告書作成など、年次単位の業務はたくさんあります。

経理の仕事はやるべきことがだいたい決まっているので、仕事の内容を把握すれば、スケジュールが立てやすくなります。ただしそれだけ、スケジュール管理が重要です。(経理3年目 女性)

スケジュール管理のコツは、作業に優先順位をつけるなどもありますが、実は人間関係が大きいのではないかと感じています。従業員の協力がないと進みませんから。(経理4年目 女性)

経理は神経を使う仕事ですが、しっかりと基礎を身に付ければ、ずっと働いていけます。私は、比較的暇な時期を利用して、日商簿記1級も取得できました。(経理6年目 女性)

会社の業種による経理の仕事の違い
9:00
出社、メールチェック
10:00
手提げ金庫の用意、現金の確認、現金の出金
手提金庫を、金庫から取り出す。手提金庫には、日常業務で発生する少額の支払用の現金が入っている。
11:00
普通預金の入出金確認
備品のチェックと補充
12:00
昼休み
13:00
小切手の受け取り振込手続き
小切手や手形の受け取りや取立は、できるだけ早い時間に。朝イチで済ませるのもおすすめ。
14:00
仕訳、帳簿類への記録
16:00
預金残高の確認、現金残高の確認、現金実査
17:00
書類の整理・ファイリング、手提げ金庫の返却
書類の整理、ファイリングをしながら、やり残した仕事がないかチェック。明日の仕事の予定も立てておく。
18:00
退勤

毎日行う仕事

  • 現金の管理
    (現金の出し入れ、残高の確認など)
  • 預金の管理
    (預金の出し入れ、残高の確認など)
  • 仕訳と帳簿への記録
  • 伝票や書類の管理

日によって発生する仕事

  • 仕入計上、買掛金管理と支払い
  • 売上計上、売掛金管理と回収
  • 未払金管理と支払い
  • 経費の精算
  • 領収書、請求書の発行
  • 固定資産計上
  • 在庫管理
経理の仕事:1カ月の仕事の流れ例
1日
在庫の確認、実地棚卸
売上代金の請求
先月の売上を計算して、請求書を発行し、仕訳を行う。
5日
月次決算
1カ月のお金の出入りをまとめる。
月次決算を始める前に、精算していない経費はないか、未提出の伝票はないかなど、社内に確認しておく。
10日
税金の納付
先月分の給与から徴収した源泉所得税と住民税を、毎月10日までに納める。
20日(給与締日)
給与の計算と振込み、社会保険料の計算
仕入代金の支払い
送られてきた請求書を整理し、支払いや仕訳を行う。
25日(給与振込日)
月次決算
末日(請求書などの締日)
社会保険料の納付、伝票類の取りまとめ
経理の仕事:1年の仕事の流れ例
4月(期首)
年次決算(決算整理)
5月
年次決算(決算書類作成)
6月
株主総会の開催
税務申告
税務申告書類を提出し、法人税、住民税、事業税、消費税を納付する。
7月
賞与計算と振込み、支払届の提出
労働保険の年度更新と社会保険料の算定基礎届の提出
11月
中間税務申告
法人税の中間申告書を税務署に提出し、前払いの税金として納税も行う。
12月
賞与計算と振込み、支払届の提出
年末調整
1月
給与支払報告書の提出、償却資産申告書の提出、法定調書の提出
従業員に年末調整に必要な書類を提出してもらい、年末調整による還付額を計算・還付する。
3月(期末)
年次決算(決算準備、棚卸)、実地棚卸
従業員に書類の提出を促すなど、年次決算のための準備を始める。

Point 4
お金が動くたびに伝票を作り、帳簿にまとめる

伝票をもとに帳簿に入力する「仕訳」は基本の業務

経理の主な仕事は、日々の取引を会計データとして集計することにあります。取引を記録する書類は「伝票」と「帳簿」です。

会社で行われるさまざまな取引は、各部署の担当者や経理担当者によって、売上伝票などの「伝票」に記録されます。経理担当者はそれらを集めて「帳簿」にまとめます。主な帳簿としては、取引を日付順に記録した「仕訳帳」と、勘定科目別に記録した「総勘定元帳」があります。

帳簿への記録は、「仕訳」という簿記のルールに従って行います。手書きで帳簿を作成する際は、取引を仕訳帳や伝票に記録し、仕訳帳から総勘定元帳に転記します。さらに仕訳帳をもとに、小口現金出納帳や預金出納帳などの補助簿を作ることもあります。

最近では、仕訳入力は会計ソフトで行うことが一般的です。会計ソフトの場合、仕訳帳に入力しただけで、自動的に総勘定元帳などほかの帳簿に転記されるので、転記ミスが起こる心配はありません。なお、これらの伝票や帳簿は決められた保管期間にのっとって保管しておく必要があります。

経理が作成する主な伝票と帳簿

伝票

  • 仕入伝票
  • 売上伝票
  • 振替伝票
  • 入金伝票
  • 出金伝票
  • 仮払伝票 など

帳簿

主要簿

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳

補助簿

  • 小口現金出納帳
  • 預金出納帳
  • 売掛金元帳(得意先元帳)
  • 買掛金元帳(仕入先元帳
  • 受取手形記入帳
  • 商品有高帳
  • 固定資産台帳
  • 支払手形記入帳 など
伝票や帳簿の処理の流れ

帳票で経理を行う場合

取引発生

仕訳

仕訳

仕訳帳に記入する

伝票を起票する

転記

転記

仕訳帳に記入する

転記

総勘定元帳に記入する

集計作業

集計作業

計算表を作成する

財務諸表を作成する

会計ソフトを使う場合

取引発生

仕訳

仕訳

伝票を起票する

会計ソフト上の仕訳帳に
入力する

自動転記

自動転記

総勘定元帳に記入する

自動集計

自動集計

計算表を作成する

財務諸表を作成する

書類・伝票や帳簿の保管期間
書類 法律 保管期間
領収書、請求書、契約書、注文請書、見積書、預金通帳、棚卸表 など 法人税法 7年
仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売上帳、仕入帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、貸借対照表、損益計算書 など 会社法、法人税法 10年
株主資本等変動計算書、個別注記表 など 会社法
税務申告書、税務届出書、決算書、社則・社内規定、定款、登記書類、許認可書類、知的所有権関係の書類(特許証など) 特になし 半永久的に保管

Point 5
手書き伝票作成時の基本ルール

伝票を正しく作成しトラブルを防止

取引の記録となる伝票の作成は、システム化が進んだ昨今でも手書きで作成されることが多いといえます。伝票の作成には、決められた記入方法や訂正方法があるので、経理業務の常識として知っておきましょう。

伝票を手書きで作成する際は、ボールペンを使います。これは、あとから誰かが金額などを不正に書き換えるのを防止するためです。同じ理由で、「消せるボールペン」や鉛筆は使ってはいけません。訂正する必要があるときは、修正液は使わず、必ず二重線で消した上に訂正印を押し、正しい数字や文字を記入してください。

また書き損じた伝票は、破棄せず、わかりやすく×印を書いてそのまま保存しておきます。伝票には必ず伝票番号が連番で割り振ってあるので、破棄してしまうと、会計監査を受ける際に粉飾決算を疑われてしまうからです。

申請書類と承認印

経理の仕事では、支払いの申請や請求書の作成依頼など、さまざまな申請書類を扱います。
申請書類は、経営者や責任者など複数が内容をチェックすることで、不正やミスを防ぐ仕組み。
申請書類を受け取ったら必ず適切な承認者の承認印があるか確認します。

伝票作成時の基本ルール
数字の書き方と訂正の仕方

良い例

一つひとつがはっきりと読みやすく書いてある。

悪い例

数字が崩れていたりつながったりしている。

良い例

一つひとつがはっきりと読みやすく書いてある。

悪い例

数字が崩れていたりつながったりしている。

線の種類と意味

Point 6
会社で使う印鑑の種類とその使い分け

契約書などに使われる印鑑。取り扱いに十分注意を

日本のビジネス文化では、承認のしるしとして印鑑を押すことが慣習になっています。
「会社代表印」は、会社設立時に法務局に届け出された印鑑。契約書や税務申告書などの重要書類には、代表者の署名とともに代表印の押印が求められます。
代表印は個人の実印と同じでとても重要な印鑑です。押印できる人を限定し、管理簿で押印記録をつけるなどして管理を徹底しましょう。「銀行印」は銀行口座を開設する際に登録した印鑑で、銀行取引や手形取引の際に、「角印」は請求書や納品書、注文書などの一般的な社外文書に使われます。「ゴム印」を使えば、住所を書く際の手間が省けます。

会社で使う印鑑の種類

代表印(実印)

最も正式な印鑑。社長など、ごく限られた人が使う。契約書や税務申告書などの法的文書に使う。

銀行印(銀行届出印)

代表印と兼用することも。口座開設や預金の出し入れ、手形や小切手の発行など、金融機関との取引に使う。

角印(社印)

代表印の次に正式な印。部長など、役職者が使う。見積書や請求書、領収書などで使う。

ゴム印(角判)

署名欄に手書きする代わりに使う印。契約書や封筒などに使う。所在地や代表者名などが分かれているものもある。

印鑑の押し方

印鑑の押し方ごとの呼び名も知っておくと、便利です。「契印」は、冊子型の契約書のページが差し換えられないよう、ページまたは製本テープにまたがって押される印です。
「割印」は「控え」と「本体」など、複数dの書類が1 組であることを示すためのもので、複数の書類にまたがって押されます。「訂正印」は訂正箇所に押し、「捨印」は訂正があったときのために、あらかじめに欄外に押しておく印のことです。

【出典】
『一番わかる! 経理の教科書』
著者:ジャスネットコミュニケーションズ株式会社
発行所:株式会社西東社