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経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会事務局

電力・ガス市場の番人~電取委~

公認会計士の知見を経済産業省で発揮!
エネルギー市場の安定継続がミッション

経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会
取引監視課 上席小売取引検査官 公認会計士
萩原 泉

経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会
ネットワーク事業監視課 課長補佐 公認会計士
安川 望

会計人の知見と経験を生かすべく、行政の世界へ

— 入省までのキャリアを教えてください。

萩原:大学を卒業して監査法人に入所し、外資系企業の日本法人や大手生保、損保を中心に監査のキャリアを積みました。米国での事務所駐在を経た後、事業会社の経理部門に転職しています。上場や買収を経験し、60歳を前にして退社。1年ほどのんびりと過ごしていたのですが、完全にリタイアするのも早すぎると思い、リフレッシュしつつ、新たなキャリアを展望していました。

安川:監査法人で製造業を中心に監査業務に携わっていました。15年ほどキャリアを積んだこともあり、会計監査については一とおりの知識を持ち、経験を積んできたという自信がつきました。ただ、一人のビジネスパーソンとして、自分はどれだけやれるのだろうか? 監査法人を離れてどこまで勝負ができるのだろうか? そんな不安もありました。会計プロフェッショナルとして専門性を高めながら、監査以外の仕事もしてみたい――そんな思いを抱えつつ、新たなチャレンジができる先を求めていました。

— 本職への応募にはどんな背景があったのでしょうか。

萩原:やりがいのある仕事を探してアンテナを張っていたところ、電力・ガス取引監視等委員会の公募を見つけたのです。まずは話を聞いてみようと気軽な気持ちで面接に臨んだところ、エネルギーシステムを支えるために会計の知見とスキルが生かせることを知り、興味を持ちました。私は監査法人から民間の事業会社に転身して20年近く民間企業に籍を置いており、行政の世界はまったく未知の領域。心機一転のいい機会ですし、自分のキャリアでも最後のチャレンジになるだろうと考え、入省を決めました。

安川:組織を離れた一人の会計人として何かに挑戦してみたい――そんな思いをあたためていた時、当職の任期付職員募集を知りました。ステップアップを志していたタイミングで、折よくこの募集に巡り会えたのです。業務内容を聞くと、これまで培ってきた監査の知識、スキルを生かしたサポート、アドバイスに力が発揮できそうな感触もありました。思い切って応募して、2021年に入省。現在は2年の任期期間が終わり、任期を1年延長して職務に励んでいます。

新たな学びと会計の知識を融合させ、市民生活を支える

— 注力している業務と、そこで感じるやりがいについてお聞かせください。

萩原:入省してすぐ電気の規制料金の値上げに関する審査に携わりました。前職を退職してからのんびり過ごしていたこともあり、大手電力会社の審査が終了するまでの半年は奔流に巻き込まれたかのような忙しさで最初は戸惑いました。ウォーミングアップもそこそこに、最初からフルスロットルで最後まで駆け抜けたように思います。この審査は世間的にも関心の高いトピックで、国民生活に直結する電気料金にかかわるものです。電気料金が決定される背景や電力会社の事業構造まで理解を深めていくうち、その忙しさは充実感に変わっていきました。私が担当したのは設備投資関係の審査ということもあり、公認会計士の専門性を発揮できたと思います。非常にやりがいがありましたね。

現在は上席小売取引検査官として、主に新たに参入する小売電気事業者の登録申請の審査とガス小売事業者の登録や変更の審査を担当しています。特に、電力業界はいまだ改革のまっただ中にあり、審査方法や進め方も試行錯誤が続きます。監査や経理業務で積んできた経験を生かしながら、申請者と向き合っています。

安川:ネットワーク事業監視課でレベニューキャップ制度を担当しています。電力を広くあまねく届けるためには、送配電ネットワークを整備・維持しなければなりません。そこで設定されているのが「託送料金」で、消費者が払う電気料金の一部として回収されています。レベニューキャップ制度とは、送配電ネットワークを計画的かつ効率的に維持、伸長させるための制度として2023年4月から導入されました。この制度に則り、送配電事業者は5年間の事業計画を作成します。委員会では、この事業計画を実行するための費用の妥当性を審査しています。

各送配電事業者の事業の構造を把握し、様々なデータを参照しながら審査を進めました。送配電事業者10社がまとめた事業計画の審査は一とおり終わっており、現在は制度の運用や改善に取り組んでいます。リアルタイムの話し合いや検討事項が制度の行く先を左右する業務は、まさにゼロからの挑戦です。責任と同時に、大きなやりがいを感じています。

— 入省前のキャリアは、現在の業務にどのように生かされていますか?

萩原:新規事業者の登録審査では、財務健全性にフォーカスし、審査を進めます。私はこれまで監査する側の監査法人と、監査を受ける側の事業会社でキャリアを積んできました。両サイドの観点を知っているだけに、スムーズに審査が進められています。もちろん、電力やガス業界に特有のビジネスモデルやコスト構造のキャッチアップは必要ですが、これまでの知見と新しい知識を融合させて業務にあたっています。

安川:監査法人時代は製造業を中心に担当していたため、電力やガスなどエネルギー関連はあまりかかわりのない分野でした。委員会に加わってからは業界特有の仕組みを把握しなければなりませんし、省庁ならではの用語も多数あります。そこにギャップを感じはしましたが、経産省の職員がフォローしてくれたこともありますし、監査法人でも新しい業界を担当することも多かったのですんなりとなじむことができました。

委員会という組織の性格上、あらゆるステークホルダーからデータが集まります。数字や情報をきちんと咀嚼し、ルールに照らし合わせて事業者の計画の適切性を判断し、必要に応じて確認をかけ、再考を促すこともあります。こうした審査のプロセスを大きく捉えると、監査業務に通ずるものがあります。前職で培ってきた会計の知識、コミュニケーションスキルが存分に発揮できていると思います。

チャレンジングな人材がエネルギー業界で躍動する

— 委員会にはどんな会計人材がフィットするでしょうか?

安川:当委員会には任期付職員として公認会計士や弁護士といった“プロ人材”が多数参画しており、切磋琢磨しながら知見を深めることができます。私自身、委員会の同僚をプロパー職員か任期付職員か意識することがありません。特別扱いされることなく、組織の一員として働くことができています。前向きに、新たな環境に取り組める方であれば、問題なくフィットできるでしょう。

萩原:未経験の分野に挑戦することに抵抗のない会計士であれば、委員会でも存分に活躍できると思います。特に新しいことに挑戦し、それを吸収して自分の糧にしたいという人なら大丈夫。一方、委員会の監視や審査には、会計・経理業務のコアなエッセンスが求められます。会計人材として基盤を固めつつ、さらに新しい分野へ挑戦してみたいと思っている方が向いているのではないでしょうか。

— 今後の目標、ビジョンを教えてください。

安川:監査業務だけではなく、官公庁の中で働いた経験を生かし、業界を俯瞰して見られるアドバイザリー、コンサルタントなども含めて、多様な業務が視野に入ります。電力業界とやり取りしてきた知見や関係性を生かせることもあるはずです。会計人として選択肢が広がる中、任期中に得た学びを今後のキャリアに生かしていきます。

萩原:私自身、当委員会での挑戦がキャリアにおける最後のチャレンジだと捉えています。監査法人から民間の事業会社を経て、官庁の経験が自分にとっては最後のピースになるのだろうと思います。かかわることをまったく考えていなかった場所にたどり着き、志を一つにする仲間と働けていることに感謝しています。

— 転職活動中、または転職を検討中の公認会計士に向けてアドバイスをお願いします。

安川:監査業界で転職を考えるのも、もちろん一つの選択肢です。そして、官公庁で働いてキャリアを積むというのも一つの選択肢です。私自身、前職では「監査法人を離れても、自分はやっていけるのか」という不安もありましたが、委員会での活動を経て、一人のビジネスパーソンとして自信を深めることができています。殻を破り、一段成長を遂げたい会計士には官公庁でのキャリアは最適な場所だと思いますので、ぜひ選択肢の一つとして考えてみてください。

萩原:私は監査法人と事業会社、官庁のキャリアを総括して、「別の領域に踏み出したことが損になることはない」という感触を得ています。チャレンジしようという思いがあり、家庭などの兼ね合いやキャリアプランとして選択肢に入るのであれば、監査法人や事業会社に加えて、官公庁でのキャリアという選択肢も加えてみてはいかがでしょうか。新しい分野への挑戦、新しい学びにプライオリティーを置く方は、ぜひ検討してみてください。

PROFILE

萩原 泉

経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会 / 取引監視課 上席小売取引検査官 公認会計士

1962年
群馬県生まれ
1986年
東北大学経済学部卒業
1988年
公認会計士第二次試験合格
太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所
1992年
公認会計士登録
1994年
米国駐在(EY San Francisco)(~99年)
2003年
エルピーダメモリ株式会社(現マイクロンメモリジャパン株式会社)入社
2021年
マイクロンメモリジャパン株式会社退社
2023年
経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会 入省(特定任期付職員)

PROFILE

安川 望

経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会 / ネットワーク事業監視課 課長補佐 公認会計士

1984年
兵庫県生まれ
2006年
公認会計士試験合格
2007年
東京大学経済学部卒業
監査法人入所
2010年
公認会計士登録
2021年
経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会 入省(特定任期付職員)

上司の視点

任期付職員とプロパー人材が融合し、個人も組織も強くなる

電カ・ガス取引監視等委員会は、電カ・ガスの全面自由化をはじめとしたエネルギーシステムの改革を進めるため、2015年9月に発足しました。委員会のメンバーは、適正な競争を守る存在として、厳正な監視はもちろん、 ガイドラインや制度の整備についても精力的に取り組みつつ、幅広いステークホルダーへの大きな影響力を意識しながら業務に邁進しています。

会計知識を有する公認会計士や法律に詳しい弁護士、金融機関出身の職員などの知見、スキルは市場の監視や料金の審査で大きく貢献しています。萩原、安川の両名は任期付職員として入省。萩原は料金の値上げ審査に、そして安川は2023年4月より適用されたレベニューキャップ制度の整備に力を発揮してくれています。両名は電力・ガスのシステム改革を支える職務にやりがいを感じつつ、その裏側に生じる責任も大いに感じて励んでいます。

エネルギー分野には様々な取引市場があり、日々活発な取引が行われています。適正な取引と消費者保護を目指すための監視、制度の整備は不断に行っていかなければなりません。両名は業務をとおして電力・ガスの幅広い知識を学んでいます。そして、彼ら任期付職員と共に職務に励むことで、プロパー職員も会計や法律の知識を得ることができています。プロフェッショナルとの連携をとおして、組織としても得難い相乗効果が生まれているのです。

委員会で携わる業務は任期付職員にとっては未知のものだったでしょう。しかし、彼らには「チャレンジしたい」「経産省の経験を生かして自分自身がステップアップしたい」という志があります。当委員会は、挑戦の気概を持った人材が羽ばたけるように助力を惜しみません。エネルギーシステムを支える使命感を持ちつつ、個人としてのキャリアアップに積極的な人材を待っています。

経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会 委員長 / 工学博士 / 横山 明彦(東京大学名誉教授)