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【レポート:パネルディスカッション】
監査法人パートナーキャリアセミナー&交流会

基調講演

まずはイントロダクションとして、パネリストのみなさんのプロフィール紹介というべき基調講演から始まりました。学生時代に会計士を目指すこととなったきっかけから、これまでの業績、今後の展望まで幅広い内容です。
また、幾多のチャンスをつかんできたパートナーたちが、どのようにターニングポイントを迎え、その際どのようにモチベーションを維持してきたのかについても語られました。

グラフや図を使ったわかりやすいスライドをご用意くださったり、楽しいプライベート写真を公開していただくなど早くも個性が発揮され、ご参加のみなさんもパートナーたちの魅力に引き込まれていました。

有限責任あずさ監査法人 パートナー 間宮 光健

有限責任 あずさ監査法人 パートナー
間宮 光健

  • ◎就職活動で数社の大手企業から内定が出るものの「何かが違う」と思い悩み、人生のテーマ探しを始めたことから会計士に興味を持った。
  • ◎就業しながらプロゴルファーのトレーニングパートナーや母校のラグビー部のヘッドコーチを務めた経験も。
  • ◎入所してからロンドン駐在までの6年は、仕事を選ばず多彩なジャンル・規模の会社を担当。さまざまな経験ができるのが会計士に与えられた特権の一つであり、その中から、何を感じて、何を返していくか意識を持つことが大事。それができるかできないかによってそのあとのキャリアが変わってくる。
  • ◎日本企業のM&Aは7割が失敗といわれているが、それを成功に導くべく、ポストマージャーインテグレーション(PMI)を積極的に手掛けている。
  • ◎コントラクトコンプライアンスサービス、つまりマンガやアニメ、キャラクター、ITのソフトウェアのライセンスなど、資源のない中で日本が今後どう生きていくかというテーマにも大いに注目している。
新日本有限責任監査法人 パートナー 稲吉 崇

新日本有限責任監査法人 パートナー
稲吉 崇

  • ◎会計士は、いろんな会社に行って、いろんな人と会って、いろんな話を聴いて、自分を高めていける魅力的な仕事。
  • ◎会計士二次試験に大学3年次に合格し、大学院へ進学。国際的な会計学の流れに興味を持ち、入所時より海外駐在を希望。
  • ◎印象に残った仕事はIPO業務。無事上場が成功し、自分の知識が外の会社の役に立つところは非常にやりがいがある。
  • ◎海外駐在中は唯一の日本人であり、営業をメインに監査、税務、M&A、PMI、アドバイザリー、トランザクションなどのすべての業務にかかわった。フロントに立つこともあれば、現地のプロフェッショナルと協力することもあり、仕事の幅とともに人間の幅を広げてくれた。
  • ◎当法人ではセクター制をとっており、現在は金属・工業セクターのリーダー。広報の仕事も担当している。
  • ◎会計士は自由度の高い職業であり、こうでなければならないということはない。目指す会計士像、パートナー像を日々考え、時には振り返りながら過ごすことで、10年後、20年後に大きな差がつくはず。
太陽有限責任監査法人 パートナー 石原 鉄也

太陽有限責任監査法人 パートナー
石原 鉄也

  • ◎パートナーとして監査半分、その他営業やIPO、M&Aを担当。中規模の組織であるため業務が縦割りになっておらず、一人で多様な業種・業務に携わることができるのが特徴。
  • ◎営業というのは、証券会社やVCとのお付き合いを含め、新規の仕事を獲得、ショートレビュー、IPOアドバイザリー業務、上場準備の監査、上場後の監査といった一連の業務をシームレスにサービス提供している。
  • ◎また、M&A、事業再生ファンドや事業会社(海外を含む)の買収を手掛ける中で、主に財務ディーデリジェンスとバリュエーションに従事。
  • ◎会計専門職大学院でIPOの講義、法科大学院で財務系の講義をしているほか、IPO関係の書籍も執筆。今年はTOB案件の第三者委員会の委員も担当。
  • ◎20代は監査に打ち込んでいて、目の前にある仕事を何でもやってきた。もともとは、売上総額一兆円といった大きな規模の監査が好きだったが、選り好みせず仕事をするうちにIPOを担当し、その面白さに気付いた。もし選んでいたらIPOの営業も講義のチャンスもなかったかもしれないし、何でもやるスタンスが大事だと思う。
有限責任監査法人トーマツ パートナー 豊泉 匡範

有限責任監査法人トーマツ パートナー
豊泉 匡範

  • ◎ここでは、モチベーションとキャリアを切り口に話を展開します。
  • ◎初めて監査の現場主任をしたときは、規模的には3人の小さなチームだったが、このチームをどう動かすか考え、一方で対クライアント面でも現場責任者として対応することができ、自信となった。
  • ◎最初から海外に行きたかったわけではなく、先輩方が行かれるのを見てかっこいいなと、そういうプリミティブな欲求から希望するようになった。
  • ◎ポーランドに赴任したときは、アジア人はわずか一人。日系企業のサポートデスクを担当したが、組織そのものをイチから立ち上げるミッションで、仲間を作りながら成功させた。
  • ◎パートナーに昇進し、モチベーションは最大に上がる。最後の砦となる立場なので責任が重く、サインするときに手が震えた。
  • ◎入所時のモチベーションはそれほど高くなかったが、さまざまな実務に携わることで徐々に楽しさを知った。それぞれの段階で目の前のことをしっかりできる人に次のチャンスがやってくると考え、モチベーションを上げていってほしい。
PwCあらた監査法人 パートナー 千代田 義央

PwCあらた監査法人 パートナー
千代田 義央

  • ◎多くの節目でさまざまな方の言葉に影響を受けた。素直に受け入れることで次の一歩を踏み出すことができた。
  • ◎会計士を目指したきっかけは高校3年次のとき。とある人から「会計士になると高級外車に乗れるぞ」と言われ、車が大好きだったので(笑)。
  • ◎赴任したボストンにはアメリカ屈指の有名大学があり、多くの卒業生がベンチャーを起業、そこでインターネット関連の企業とかかわる。帰国後、インターネット関係、エンターテインメント関係の担当に。
  • ◎日本でカジノ創設の議論が盛んにされているが、そこにもビジネスの機会があると考え、着手している。
  • ◎今後の目標は3つ。まずはクライアントの満足度を上げ、当法人が大きくなるために貢献していきたい。次に業界の発展に寄与すること。会計士協会の広報を担当し、大学を回るなどの活動をしている。最後にデジタライゼーションや旅行客増加への対応。起こるであろうテレビ業界の変化や、オリンピックなどによる観光客の増加に対してサービスをしていきたい。

パネルディスカッション

続くパネルディスカッションは、3つのテーマでパートナーたちが意見を交換する今回のメインイベント。

パネリストのみなさんは、前に出た意見を受けるかたちで話を膨らませながらご自身ならではの意見を展開。具体的なエピソードや、わかりやすく絶妙な例えを織り交ぜながらお話しいただきました。

興味深かったのは、個性あふれるパートナーたちに共通点が多かったこと。特にみなさんが一致した意見として挙げられたのが、「監査法人に入所して数年は、仕事を選ぶことなく幅広く何でもやる」ということ。多くの経験を積み重ねることで、先のことを見通す力や対応力を付けたり、柔軟な発想を得たり、可能性の選択肢を広げることができると考えていらっしゃいます。
実体験に基づいた説得力のある話に、ご参加いただいたみなさんも真剣に耳を傾けていました。

最後には質疑応答の時間があり、「学生時代、試験勉強以外にやっていたこと」「入所時にはどんなビジョンを描いていたか」という質問が挙がりました。ユーモアを交えた回答に時折り笑いが起こるなど、すっかりリラックスムードに。

【テーマ1】現在の業務内容とやりがい

PwCあらた監査法人 パートナー 千代田 義央
PwCというネットワークを生かして好きな業界に携われる。

今はエンターテインメント業界に関する監査やアドバイザリーを担当するほか、PwCというネットワークの中で、日本代表としてインターネットとメディアのとりまとめをしています。また、まだ立ち上がってはいませんが、カジノやインテグレイテッドリゾートなどのビジネス機会を模索しています。

好きな業界に携わることができるというのは大きなやりがいですね。例えばゲームはかなりやっていて、課金しているくらいなのでどれほど好きかおわかりいただけるかと(笑)。新しい業界ですので、イノベーティングな発想でビジネスが動いていくため、非常に頭を使うところがおもしろい。ただし目に見えないものを取り扱っているので監査は大変です。

グローバルのネットワークを使って仕事をしますので、日本にいながらにして、シンガポールで何が起こっているか、アメリカで何が起こっているかを知ることができるのも魅力。例えば日本では、CMはありますが基本的にテレビを無料で見ていますよね。これは世界的にはあまり多くなくて、日本も有料に変わっていくと考えられます。すでにそういうことが起こっているアメリカに問い合わせて、リアルな情報を得るのは非常に有益です。

有限責任あずさ監査法人 パートナー 間宮 光健
多くの経験を積むことは、先見の明を養うための基礎体力作り。

僕はよく、ネットに出てくる情報は価値ゼロだと言うのですが、検索して出てくることにもはやバリューはない。5年後、10年後に何が起こっているか、検索しても合っているかわからない情報しか出てこないですよね。
だけどそこを想像し、起こり得ることに手を差し伸べることが、リスクをミニマイズしていくという考え方であり、それこそが監査の原点だと思っています。

先ほどの千代田さんの話に納得感があったのは、好きなことをやるという選択肢が一つあるかなと。ただし携わりたい業界があっても、その業界にニーズがなければできませんし、その業界が発展しなければ自分が活躍する場はない。
だから先見の明が必要で、いろいろな規模のいろいろな業種の会社を経験する一つの目的は、そのための基礎体力を付けるためともいえます。
僕は5年後、10年後にはライセンスのビジネスが来ると思っていますが、みなさん半信半疑だと思います。でもそれを今までの経験や他のさまざまな要因を加味して、どういう風に考えられるか思考回路を作っていくんです。
監査法人においてはそういう選択ができる、素材がごろごろ転がっているのが魅力なのではないでしょうか。

有限責任監査法人トーマツ パートナー 豊泉 匡範
グローバルな環境でメッセージを発信し、思いを伝えられる。

グローバルなメディアのクライアントを担当しています。デジタルが進化する中でビジネスがどんどん生まれていますが、そのスピードに会計処理が追いつかないんですね。
デジタルの世界はボーダレスですから、日本で計上するのか海外で計上するのかの判断が難しい。それをどう処理するかというと、「どこで計上するか」「実態はどうか」などを一から検討して処理するんです。

グローバルな視点はもう一つあります。海外に進出している日本発の企業には各国に拠点があり、基本的には統一した監査人でトーマツでしたらデロイトが担当しますが、会計基準が違えば各国でどうしても思いは違うんですね。
サービスの品質を落とすわけにはいきませんので、親会社の監査人から、現地の監査人たちに、メッセージとして発信していくことが重要です。例えば各国を日本に集めて、グローバルアカウントミーティングをするなど、いろいろな意味でグローバルな視点は求められています。

クライアントの価値になることを、監査を中心にコンサルティングも税務もファイナンシャルアドバイザリーもトータルでサービスを提供していく。メッセージを発信して思いを伝えていくことは大変やりがいがあります。

新日本有限責任監査法人 パートナー 稲吉 崇
未来を見据え、グローバルな交流で自身を高めていける。

日本は将来、2050年、2100年と人口が減っていくと考えられますので、日本の各企業でも海外にビジネスチャンスを求め、自分たちがこれまでに築いてきたものをどう広めていくかというところに注力されています。
そういう状況の中で、われわれがグローバルなネットワークをもって、サポートできることはたくさんあるわけです。日本企業が持っている力を世界でさらに発展させていくために、僕らができることを大きく広げていきたい。
そのために語学の力は非常に重要になっていくと考えて間違いないでしょうね。
いろいろなところへ行っていろいろな経験をし、自分の力を高めていけるのがこの仕事の好きなところであり、魅力です。そういう仕事はあまりないのではないでしょうか。

やりがいとしては、グローバルアカウントミーティングなどを通して、バラエティに富んだ業種の会社のさまざまな立場の方たちと交流する中で、どういったコミュニケーションができるのかを考えていくことにあります。
実際にさまざまな考え方を知り、自分の中に取り入れることでさらに発展させていく、そういった成長ができるのが僕の中でやりがいですね。

太陽有限責任監査法人 パートナー 石原 鉄也
企業にとって会計士は医者。その信頼関係をぜひ体感して。

実は私、高校のときは理系のクラスでした。医者になりたかったのですが、物理ができなくて最終的に文転しました。
みなさん、人前で裸になることはないと思いますが、医者の前ではなれますよね。相手はプロフェッショナルで、誠実性と倫理観、それに技術があって、病気を治してくれるに違いない、プラスになるに違いないと思うからなれるんです。

企業にも、他者に絶対見せたくないもの、見せられないものがいっぱいあります。ライセンス、権利関係、特許、取締役会議事録も会社でほんの一部の人しか見ることはできません。それを堂々と見せてくださいといえる職業は監査人しかないんですね。
企業側は、制度としての監査が必要だからという理由だけではなく、厳しいことを言われながらも、自分たちのためになることがあると思うから見せてくれるわけです。

会社にとって会計士というのはまさしく医者だと思う。だからこそわれわれが蓄積するノウハウはとても貴重ですし、医者と同じようにプロフェッショナルとして研鑽していかなければならない。
こういったことは監査法人で年次が上がるほど体感できますので、3~4年で投げ出すことなくキャリアを重ねて、やりがいを感じていただきたいですね。

【テーマ2】今後の監査法人においてパートナーというキャリアの可能性と必要な能力・経験

太陽有限責任監査法人 パートナー 石原 鉄也
ゼロイチを可能にするリーダーシップが求められる。

今日お集まりのパートナーの方々は、何か“ゼロイチ”の仕事をされているんですね。
監査法人にいる方は優秀なので、ほとんどの方が一を二や三にはできてしまうんです。ところがゼロの状況から一を作り出して後輩に引き継げる人は少ない。そういう方こそが「この人の後ろを歩こう」と思わせるリーダーシップを備えていて、パートナーには欠かせない能力だと思います。
スタッフのうちからゼロイチができる必要はありませんが、何でもそういう気概で取り組むことが大事です。

では若いみなさんに何が必要かというと、やはりさまざまな業務を経験することだと思います。過去の経験と自信、ネットワーク、これらを養っておくことが必要で、やる気だけでは自分を牽引できません。
みなさん試験勉強をされてきた中で、得意不得意があると思いますが、それが勉強を始める前からわかっていた人はいないと思うんですね。
今からIPOだけをやりたいなどと決めてしまうのは正直もったいない話で、みなさんの可能性の選択肢をつぶしてしまうかもしれない。いろいろやった上で興味を持って専門分野を確立すればいいと思いますし、好き嫌いなくやっていく中で、ぜひゼロイチを意識してみてください。

新日本有限責任監査法人 パートナー 稲吉 崇
自分が組織を作るつもりで仕事に当たることで起業家精神を養う。

パートナーは経営者として組織を見ていく意識が大切で、これは突然できることではありません。
監査法人に入所すればもちろん職階は付きますが、職階にかかわらず、この組織をどうしていきたいかを意識するべきです。自分に与えられたことをただやるだけではなく、経営者としての目線をもって対応することが大切ですね。

一般の会社で若いうちからプロジェクトを立ち上げるというのは難しいと思うのですが、監査法人は自由度が高い。逆にいえば、待っていても何も来ないということ。自ら監査法人を作っていくんだという気概を持ち、起業家精神、アントレプレナーシップを養うつもりで日々を過ごすかどうかで大きく差が出ると思います。
実際、自分が何かを動かしたいと思いながらアクションを起こすことで、自分の思う方向に行ったりするものなんですよ。

もう一つ、当事者意識というのでしょうか、「この人はどういう風に考えているのか、それならこういう風に見る必要がある」と、いかに相手の立場に立って話を聞けるか、話ができるかの能力が求められてきます。
そのためにも成功経験、失敗経験、いろいろな経験を数多く積み重ねることで、対応力を身に付けてほしいと思います。

有限責任監査法人トーマツ パートナー 豊泉 匡範
スペシャリストであると同時にゼネラリストでもあると考えて。

パートナーは経営者なのですが、経営者は組織全体の経営者であると同時に、エンゲージメントの経営者でもあります。クライアントにしっかりサービスする、チームをマネジメントする、かつ収益性を確保していく、全工程で経営者の目線をもって考えるべきです。

さらに監査法人のパートナーは、スペシャリストであり、ゼネラリストでもあるべきだと思うんですね。会計だけを考えるのではなく、企業のために何ができるかトータルで考える。
持続的に企業を発展させていくためには新しいことにチャレンジしていかなければなりませんので、ゼネラリストとしての能力を身に付け、常に新しい分野にチャレンジしていくマインドは欠かせないでしょう。

もう一つ、われわれが監査をやる時点では変化をリスクと捉えますが、変化に対応して合わせていく必要があります。
何かしら会社の状況に変化があるということは、今まで通りやっていてもうまくいかないわけで、「こういう変化の場合、どういう風に跳ね返るのか」、考えを巡らせます。 世界的な情勢や会社内部の問題などさまざまな要因で、それこそアメーバのように変化していきますから、常にアンテナを張りながら対応することが求められます。

有限責任あずさ監査法人 パートナー 間宮 光健
40年先をイメージすること、仲間作りを意識することが大切。

先ほど石原さんも医者に例えていらっしゃいましたが、僕が昔から意識していることは「医者は患者を選ばない」ということ。
われわれはどんなクライアントでも治さなければなりませんし、今年を乗り切れればいいという話ではなくて、会社を50年、100年と続かせていくために何をすべきかを考えるのが監査法人です。

みなさんに意識してほしいのは、3年後、5年後ではなくもっと先のこと。40年先、自分がどんな生き方をしていたいかということを描いてほしい。
今日そろった方々は若くしてパートナーになっていらっしゃいますが、周りの人たちの2倍、3倍働いているか、能力があるかといえば、多分そうではないと思う。ではなぜ実績があるのかというと、やっぱり一人じゃなくてチームで仕事をしているからなんですよね。
自分が困ったとき、助けてほしいとき、いろんなところに自分のために力を貸してくれる仲間がいることがすごく大事。
年を取ったから、パートナーになったから仲間を作りたいと思ってももう遅いです。若いうちから、一度会った人にもう一度会いたいと思わせるような意識を持ってほしい。今から続けていくこと、その時間こそが意味のあるものになっていくはずです。

PwCあらた監査法人 パートナー 千代田 義央
オーナーシップをもって、クライアントと信頼関係を結ぶ

会計士、監査人というのは信頼が一番大切です。入所1年、5年、10年と、それぞれの段階なりに信頼に対する意識はあると思いますが、パートナーの立場としての信頼というと、クライアントからの信頼にほかなりません。
どこまでやれば信頼されるという基準はなくて、業界を知らないといけないですし、その企業のことを知らないといけない。時間が蓄積されてやっと築けるものなんですね。

ではパートナーとして、クライアントと信頼関係を結ぶ上でどんなスキルが必要になってくるか。
会計監査をするとどうしても、ダメと言わなければならない厳しいことが起きます。一方でアドバイザリー業務やコンサルティング業務では、クライアントが進むべき方向についてより具体的に提案をしていく。
監査法人の対応は非常に多様性があるんですね。そう考えていくと求められるのは、やはりオーナーシップだと思います。

もう一つ、私たちはサービス業ですからコミュニケーションも大切です。話したり聞くだけでなく、時に勇気づけたり、話を要約してまとめなければならない。この部分は仕事を初めてから醸成されると思いますので、あまりしゃべりが得意でないという方も心配はいらないと思います。

【テーマ3】仕事をする上での信念と今後パートナーを目指す若手会計士に伝えたいこと

有限責任監査法人トーマツ パートナー 豊泉 匡範
ゴールを決めつけず、変化に対応してサバイブしてほしい。

先ほどお話ししました変化についてダーウィンの進化論を引用すると、強い者や賢い者が生き残るのではなく、変化に対応していける者が生き残るんです。
今後会計士業界は大きく変わります。これからIOTや、すでにデータ監査はどんどん入っていますが…そういった多様な要因の影響を受け、どのような形で変わっていくのか予見できない部分もあるのですが、変化することは間違いない。
余談ですが、会計事務所って土地を買わないんですね。レントなんですよ。自社ビルを買って器の中に収めようとしても難しい。変化に対応してサバイブしていくことが重要なんです。

ビジョンにしてもそう。望むゴールがあっても、そこに対して一直線に進めるものではない。一つひとつを頑張ることで次のオポチュニティーが与えられ、ジグザグしながら道を進むんです。
やっていくうちにゴールが変化することもあります。振り返ったときにキャリアができ上がるのであって、最初からでき上がるものではないんですね。
初めから「これしかない」と思い込まず、いろいろな経験をし、いろいろな人と会って刺激を受け、柔軟な発想をすることで目標をリバイスしていく。そういうことも必要なのではないでしょうか。

PwCあらた監査法人 パートナー 千代田 義央
ビジョンを右脳に描き続けることで、時が来たら実現させる。

豊泉さんからゴール設定のお話がありましたが、私もビジョンについてお話しさせていただきます。これから会計士になるという方は将来のビジョンを持たれていると思うのですが、中にはまだ考えていない方もいらっしゃるかもしれません。私は正直、この業界に入ったときにビジョンはなかったんですね。

みなさん一度は経験があるのではないでしょうか。夢を見ると正夢になったり、何かをずっと思い続けていると現実化することってありますよね。
それはおそらく、継続的に思い描いたことが右脳の中で働いていて、時がきたら自然と手が動くというような、無意識の部分から繰り出されるものがあるのではないかと信じているんです。

ビジョンをすでにお持ちの方は、明確なビジョンを常に右脳の中で描いていただいて、ここぞというときに行動に移していただきたい。
逆にビジョンがない方は、「どういう会計士になりたいか」「自分は何をやっていくべきなのか」を、まずは目の前の仕事を一生懸命に取り組むことで醸成していってほしい。
時間はどんどん流れていきますので、ビジョンがないなりに、何をするべきかを考えることが必要だと思います。

太陽有限責任監査法人 パートナー 石原 鉄也
引き受けたら高度なレベルでやり抜くプロフェッショナリズムが大切。

パートナーの方々、とても考えが似ていて、同じ本を読んでいるのかもしれない、同じセミナーを聞いているのかもしれないと共感しながら聞いています。

われわれはプロフェッショナルですので、パートナーでなくてもプライドとともにプロフェッショナリズムを大切にしてほしい。
会計士になろうか、会計士試験受けようか、悩むことは自由ですが、受けると決めたら合格しなければ意味がないですよね。
これと同じようなことが、仕事の場ではより高度なかたちで起こります。いったん監査を引き受けたら、その過程でダメと言うべきときが来れば、絶対に言わなければならない。プロフェッショナルとして何があろうとも適正意見を出し、期日を厳守することが求められます。
やはり目の前にある仕事をきちんとこなしていく、この積み重ねがプロフェッショナルの基礎となるのではないかと思います。

パートナーの方々の話を聞いているとおもしろそうですよね。つまらなそうに仕事をしている人がいない。言葉の端々から仕事に魅力を感じているのが伝わります。 みなさん素晴らしい資格を目指す、もしくは合格した方たちだと思いますので、ぜひいい仕事を選んだと思って長く働いていだだきたいと思います。

新日本有限責任監査法人 パートナー  稲吉 崇
仕事をする上で心掛けたい五箇条、一番大切なのは楽しむこと。

伝えたい5つの話しをさせていただきます。
1つ目は「仕事を楽しくやる」ということ。人生で仕事をする期間は長いので、つまらないことをずっとやるとしたらパートナーになりたくはないですよね。

2つ目は「目標を立てる」。仕事は忙しいので、その意識をしないと流されやすい職業です。何をやりたいのか目標を立てることによって日々のレベルアップにつながります。

3つ目は「ビジネスマインドを持つ」ですね。特に入所して5年目くらいまでは数字のチェックだけで終わる日もあるかもしれませんが、自分がその会社の社長だったら会社をリードしていけるか、というようなことを考えてみてください。ビジネスマインドをもって数字をにらむことによって、数字の見え方が変わる瞬間が来ます。一日では絶対に変わりませんが、次第に感覚が養われていきます。

4つ目は「自分の時間を作ろう」。仕事三昧になる時期もあると思いますが、リラックスしたり、違うことにチャレンジする時間をぜひ作ってください。

5つ目は最初に戻って「とにかく楽しもう」。つらいことも多々あると思いますが、そういうときこそ楽しむ精神を持ってほしい。仕事を楽しむ、人生を楽しむポジティブな気持ちを忘れないでください。

有限責任あずさ監査法人 パートナー 間宮 光健
人に憧れられる存在になってからがプロフェッショナルとして一流。

監査法人という業界は、10年後、よりプロフェッショナルファームに近くなっていると考えますし、そうしていかなければならないと思っています。
10年後といえばみなさんが一人前になって活躍しているころですよね。そのときこの業界が、みんなに憧れられるような存在にしていきたいし、絶対なっていると。
そのために、われわれの法人もコミットしてやっていかなければならないと、今日再認識しました。

私はスポーツの世界の方に話を聞く機会があるのですが、長島一茂氏と話をしたときに「僕は二流なんです。やりたくて野球をして巨人に行きました、そこで終わりました、という。でも親父は違う。一流のプロフェッショナルというのは憧れられる存在なんです」と。
そのとき以来、僕が強く意識しているのは、やりたいことをやっているうちはプロフェッショナルとして二流であり、「この人と仕事がしたい」「こんな人になりたい」と思われてからが一流だということ。
せっかく自分が選択した職業のプロフェッショナルとして、憧れられたいと思うじゃないですか。監査法人というフィールドは、それだけのチャンスがあると思いますし、そのためには一人一人がその思いを持って努力していくことしかないと思います。

交流会

交流会

交流会は、法人ごとにテーブルを分け、自由に回っていただくスタイルで行いました。

参加者のみなさんにさまざまな世代の会計士から話を聞いていただこうと、各法人からは入所2~3年の若手スタッフ、シニア、マネージャーといった各職階の会計士の方もお集まりくださいました。
入所3年のスタッフの方には「なぜこの法人を選んだのか」「今どんな仕事をしているのか」、また女性スタッフには「男性とキャリアに差はありますか」といった質問が投げかけられ、これから監査法人を目指すみなさんが感じている疑問や不安を、より近い目線からアドバイスされていました。

参加者の中には、顔見知りのスタッフの方と和気あいあいと談笑する方や、いくつものテーブルを回ってたくさんの名刺を受け取る方もいらっしゃり、思い思いのやり方で交流されていました。
話は尽きることなく、予定時間を越えて盛況のうち終了となりました。

第一回の開催ということで行きとどかない面もあったかと存じますが、パートナーをはじめご参画いただいた法人のみなさま、ご参加くださった若手会計士、論文式受験生のみなさまのおかげで成功させることができました。

みなさんからいただいたご意見をもとに、より良いかたちで次回開催を予定しています。今回は参加できなかった方もぜひ足をお運びいただければ幸いです。

参加者の声

  • 全員の方が、「仕事を好き嫌いせず、目の前の仕事に全力で取り組むべき」というお話しをされていたことが印象に残りました。
  • 「ゼロから一を生む人がパートナーになる資質がある」というのが興味深かったです。
  • 医者の例えに、会計士という仕事に対する責任感を感じ、胸に刺さりました。
  • 今まで勉強だけをしてきたので、これから会計士としてビジョンを持って仕事をしていくのが大事だと思いました。
  • 法人さんの説明会に行ってもパートナー目線での話は聞けない。今日は貴重な話が聞けました。
  • これまで2つの法人さんを回っていましたが、5法人も集まるということで、一度に多くの話が聞けて良かったです。
  • 女性の比率が少ないと思っていた法人さんにも女性が半分くらいいて、働きやすい環境とわかりました。自分が勝手にイメージしていたことが実は違っていることがいろいろありました。
  • 新鮮な情報が得られたので、今後の就職活動に役に立ちそうです。