2017年9月11日
相続登記等の手続きでは、相続人を特定する戸籍謄本等を提出する必要があります。この戸籍関連の実務は往々にして煩雑。そこで手続きを簡便化する新制度として、5月29日から相続に関する情報を一枚にまとめる「法定相続情報証明制度」がスタートしました。制度の概要と相続実務への影響を考えてみましょう。
「法定相続情報証明制度」は、戸籍等の情報について公的証明の付いた相続情報の写しを請求できる制度。同制度の主な目的は、手続きの煩雑さや登録免許税の負担などが原因で、権利の変動があっても行わないケースが多い相続登記の推進です。
相続登記では、法定相続人を特定するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要です。この戸籍情報はしばしば大量になります。とくに不動産が複数ある場合などでは、同じ手続きを何度も行い、非常に煩瑣になることがあります。
同制度のスタートにより、最初は法務局(登記所)に被相続人の戸籍書類一式を提出する必要がありますが、以降は一枚での証明が可能となります。これにより、スムーズに実務が行えるようになり、不動産の権利関係を明確にする登記の実施が促されることが期待されます。
国の制度である登記だけでなく、民間での利用も期待されています。法務省は、同制度について「相続登記の申請⼿続をはじめ、被相続人名義の預金の払戻し等、様々な相続手続に利用されること」への期待を示しています。
相続実務では銀行口座の凍結により、払い戻しができないことが問題になることがあります。被相続人の口座が多数ある場合などは、金融機関ごとに相続人への対応の違いもあり、さらに困難が大きくなります。証明制度の民間での利用の内容についてはまだ不透明ですが、金融機関同士の連携で、使い勝手の良い制度になってくれることを期待したいところです。
なお、写しの申請の代理士となることができるのは、法定代理⼈のほか、親族と資格者代理士。この資格者代理人とは、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士です。つまり、税理士は、相続実務で直接的に同制度に関する業務を行える存在になります。
今後、相続業務にかかわる税理士は、法定相続情報証明に関する書面を頻繁に目にすることになると思われます。また、相続税申告の添付書類としての利用も、詳細はまだわかりませんが、なんらかの関連が出てくるものと思われます。同制度による請求方法、書式、書面の見方などは早めにチェックしておいたほうが良いでしょう。