経理職が英語力を身につけると年収が上がるのか?

【鼎談】経理パーソンを対象に行ったアンケート結果をもとに英語学習や経理職のキャリアについて語る

ビジネスシーンでの英語スキルの需要がますます高まっている昨今。
社会人の英語勉強法や、英会話スクールは世の中に数多くありますが、経理という専門職に役に立つ英語力を身につけるために試行錯誤されている方も多いのではないでしょうか。
経理パーソンを対象に行ったアンケート結果をもとに、英語学習・経理実務・経理職のキャリアに詳しい三氏が"経理職の英語力と年収の関係"、"経理実務に効果的な英語学習"について語り合いました。

経理職の英語学習率と日本企業の海外進出

Q1 英語の学習をしていますか?

1位 している
72%
2位 していない
28%
安島

今回のアンケート結果によると、Q1で「英語の学習をしているか?」という質問に対して、経理担当者のおよそ70%もの方が英語を学んでいることがわかりました。

青山

大変興味深いのは、今回のアンケートの回答者で英語を学習されている方の半数以上が40代以上のシニア層で、経理経験が10年以上の方が1/3超を占めているということです。
この世代の多くは、管理職の方でしょうから、おそらく海外進出先とのコミュニケーションなど、必要に迫られて学習されているのではないかと推測されます。

それでは実際に、日本企業の海外進出度の傾向はどのようなものか、マクロのデータ(JETRO「日本の国・地域別対外直接投資残高」)をみてみましょう。
日本の対外投資残高は、リーマンショック直後の2008年末の6,800億ドルから2014年末は1兆2,000億ドルへと7年間で、5,200億ドルも増加しています。

増加額を地域別にみていきますと、アジアが1,900億ドル増、北アメリカは1,700億ドル増、ヨーロッパは1,200億ドル増という内訳です。アジアのさらに内訳をみますと、中国が550億ドル、アジアNIES(香港・台湾・韓国・シンガポール)が600億ドル、ASEAN4(タイ・インドネシア・マレーシア・フィリピン)が560億ドル増となっています。アジアへの進出の高さがうかがえます。

一方、対外直接投資残高のシェアの推移内訳をみてみますと、アジアは+5%、北アメリカ△1%、中南米△7%、ヨーロッパ±0%となっており、ここでもアジアのシェアの伸びの勢いが衆目を集めています。

この状況を、経理担当者の仕事という観点で見ると、アジアを中心とする海外の現地法人の経理担当者とのコミュニケーションが増えているというケースが多くなっているのではないでしょうか。

下又

下又 健
株式会社レアジョブ 
執行役員

海外進出の仕方が変わってきています。投資の対象国がリーマンショック前の中国から、その後アセアンを中心とするアジアにシフトしているのと同時に、海外進出のスタイルが単なる製造拠点としてだけではなく、市場として販売機能も持つケースが増えているのです。
このことは日本人の英語ニーズに大きな変化をもたらしています。

製造拠点の場合、日本から技術を持っていきその技術を使って工場で生産することが目的であり、その場合コミュニケーションのスタイルは「製造の方法を教える」といったワンウェイに近い形で成り立ってきました。
しかし、現地法人で製造するとともにマーケティング、営業販売を推進していくとなると、現地市場でどのような商品が好まれるか、どのようなスタイルで販売するのか、といったコミュニケーションを現地スタッフと密に行っていくことになります。

その場合に求められるのは、現地スタッフとチームを組んでビジネスを推進できる英語コミュニケーション能力です。
そのため、求められるものが「結果を出せる」英語力に変わってきているのです。
そして投資先がアセアンを中心とするアジアであることは、コミュニケーションの相手がアメリカ人やイギリス人などのネイティブスピーカーではなく、お互いが第二言語である英語によるコミュニケーションで意思疎通を図ることになります。
そこで用いられるのはアメリカ英語やイギリス英語ではなく「World Englishes」です。

「英語ができる方が求人条件が良いから」というのは実感

Q2 英語を学習している理由を教えてください。

1位 英語が出来る方が経理スキルが同じでも求人条件が良いと思うから
125
2位 趣味や自己啓発の一環として英語を学習したいから
116
3位 将来グローバルに働くことを目指しているから
95
4位 外資系企業の求人が増えているから
50
5位 同僚、上司若しくは部下に母国語が英語の外国人がいるから
46
6位 最新の会計基準を学ぶ必要があるから
39
7位 取引先に外資系企業が増えたから
34
その他
28
安島

続いて、Q2の英語学習の理由は第1位が「英語ができる方が求人条件がよいから」、第2位が「趣味や自己啓発のため」、第3位が「グローバルに働きたいから」という回答が続いています。
これについては、どのようにみられますか?

青山

青山 隆治
リソース・グローバル・プロフェッショナル・ジャパン株式会社
コンサルタント
税理士・公認内部監査人

私は、第3位の「グローバルに働きたい」という理由に注目しています。
先も申し上げましたように、回答の多勢を占めるシニア層がもはや国内のマーケットにとらわれず、世界を目指しておられるには若者とは違った理由があるのではないかと思います。
つまり、国内の経理のマーケットにはシニア層には需要がないものの、一歩目を海外に転ずれば、日本人を必要とする仕事は案外多いのではないでしょうか。

もっとも本当にグローバル化している多国籍企業では「グローバル」という言葉はあまり使っていないような気がします。
例えば自分は日本人で今日本にいるが、上司はアメリカ人でシンガポールにいて部下は中国人で上海にいるという感じです。
そうなると、特に特別なこととしてではなく共通のコミュニケーションの手段として日常的に英語でコミュニケーションを図ることになります。

また「グローバル」という点について私が外資系企業のお客様のところに行って感心するのは、各国の共通認識を統一化するためのフォーマットが確立されているということです。
たとえば、あるコストの予実対比レポートを作成するにあたって、きっちりした共通フォーマットがあり、個々の項目には何を記載すべきか、きっちりした定義が記載(もちろん英語で)されています。

このように各国の子会社が各自で判断させないようにコントロールしているわけです。
ですので、グローバル・コミュニケーションというのは、単に言葉の問題だけではなく、共通認識の相違という文化的な問題もあるわけです。
特に、外資系企業の場合は、むしろ全社での共通認識がないことを前提に様々なプロセスが作られており、あうんの呼吸で育ってきた日本人からみれば、それが一面わずらわしいとも感ずる面もありますが、かえってそれによって効率化がすすめられるわけなのです。
このような文化的な違いという点をきちんと考慮しているのがグローバル企業の特徴だなと感ずる次第です。

下又

私は第1位が「英語ができる方が求人条件が良いから」というのは実感しています。
私は以前マレーシアで会社を経営していた経験があります。マレーシアではマレー人のほか、中国人やインド人とも働きました。
マレー人の場合、マレー語しかできない場合と英語ができる場合では収入に約2倍程度の格差が生じます。
このような状況下にあると、親は子どもが小さいうちから必死に英語を学ばせます。

日本の場合は英語力による収入格差がまだ1.2倍程度ではないでしょうか。
けれども、日本においてもその格差はどんどん他のアジアの国々に近づいていくのではないかと思われます。

正社員求人における募集職種×求められる英語力×年収の相関(図A)
安島

安島 洋平
ジャスネットコミュニケーションズ株式会社
コーポレートコミュニケーション部 部長

当社の求人データ、直近3年間で発生した約2,000案件を分析した結果、ポストやランクにもよりますが、経理、会計分野の求人において英語力を必要とする求人と必要としない求人では、年収が10%~40%ほど変わってきていることがわかりました。(図A)

例えば、経理の担当者を求める求人では、ビジネスレベルの英語力が必要な求人は英語力が不要な求人と比較して年収が29%~41%(図A-①)も高いことがわかります。
英語がビジネスレベルで決算業務ができる人であれば、英語力が不要な企業の部長レベルの年収よりも高い場合もあるのです。(図A-②)

ここでいうビジネスレベルとは、業務上英語を使用し、日系グローバル企業の海外現地法人の経理担当者とメールや電話等で連絡を取り合いながら会計データの修正を指示し、内部統制を利かせるような仕事や、外資系企業の経理責任者として、本国へ決算等のレポーティングをすることが出来る人です。

一方で日常会話とは、外国の方の来客時に簡単なご挨拶やアテンドが出来たり、外国からの電話を該当部門に取り次いだりすることが出来る前提です。
また、読み書きレベルとは、英語表記のERPシステムに抵抗が無く、英語で書かれた帳票を処理し、英語で共有される社内の連絡事項に対応できるレベルです。

派遣スタッフであれば、英語表記のERPシステムの使用経験があると時給が高い傾向にあります。
国内の一般的な会計ソフトと仕組みが違い、使い慣れる必要がありますが、経理経験があれば英語のアレルギーがないことをTOEICのスコアで示すことで外資系の経理部で働く可能性は高まります。

正社員が売り手市場のなかで正社員採用の採用が難しくなっており、派遣から正社員に切り替わるケースが増えています。英文経理のキャリアを身につけるためにも正社員の可能性がある求人に絞って外資系企業にチャレンジをすることも狙い目だと思います。

日本の経理の現場でも「話せる環境」がでてきた

Q3 仕事上、特に重要だと思う英語力の要素を教えてください。

グラフ
1位 スピーキング
45%
2位 リーディング
22%
3位 ライティング
19%
4位 リスニング
14%
安島

では次に、Q3「仕事上、特に重要だと思う英語の要素」の第1位はスピーキング、第2位はリーディング、続いて、ライティング、リスニングという順になっていますが、これに関してはいかがでしょうか?

青山

第1位はよくわかりますが、リスニングが最下位という結果は意外ですね。
「話す」能力と「聴く」能力は表裏一体ですし、相手の言うことを正確に聴きとる能力がないときちんと「話す」こともできません。
また、先にもでてきましたようにアンケート回答者の主体が40歳以上ということだとなおさら、学校教育でリスニングを学習してきた経験は少ないはずですし、何よりもリスニングは一番伸びにくく、強化するには相当時間を要します。個人的には、第1位と考えているのですが。ただ、業務上はメールでのやりとりが多いので、実際にはさほど必要とされないのかもしれませんね。

下又

日本人の多くの方が話せないのは大きな理由があります。
まず第一に、言語間の距離の問題があります。例えば、英語とドイツ語は言語学的にも近い関係にありますが、日本語と英語ははるかに遠いですね。ですので、日本人はドイツ人が英語を学習する以上の労力が必要とされるわけです。

第二に、「話せる環境」が近くにないこと。たとえば、外資系企業にお勤めの方で、周りが外国人ばかりだと、常に「話せる環境」下に置かれているわけですので、上達するスピードも速いですが、そういう環境が全くないと、上達スピードも遅くなります。

最後に、学校教育で教える学習方法が未だに、外国人がラテン語を学ぶスタイルと同様の方法を採用している点だと思います。生きた英語を習得するには、よりコミュニケーションを重視したアプローチに変える必要があると考えます。実際にそういう取組をしている学校もでてきているようですが、まだメジャーではないですね。

青山

下又さんのご指摘の点はすごく共感できます。
とりわけ、第2の「話せる環境」にないとわざわざ英語を習得しようとも思いません。
個人的な体験ですが、典型的な日本的保険会社から外資系コンサルティングファームに転職して、上司はアメリカ人、社内共通語は英語、プロジェクトも英語という環境に入れられてしまうと、英語を使わざるをえませんし、上達しないとクビにもなりますので、必死にやりました。(笑)

やはり無理やり英語しかない環境に追い込んでしまうことが上達の早道のような気がします。
日本の経理の現場でも「話せる環境」がでてきたという点では、逆に喜ぶべきことなのかもしれません。

おすすめの英語学習方法について

安島

英語学習をすでに行っている経理担当者に対して、おすすめする英語学習方法を教えてください。

青山

映画好きの方であれば「映画を字幕なしで楽しみたい」というのも一つの学習方法ではありますが、経理パーソンの英語習得方法としては回り道のように思います(趣味として考えるなら別ですが)。
たとえば、タイの現地法人の責任者と毎月の収益報告をきちんと押さえるようになることが一つのターゲットであるとしましょう。
そうすると、映画の小粋な会話表現をマスターすることは直接の仕事とはつながってきません。
つまり、英語学習のベクトルが異なるわけで、そもそもその方が英文決算書を読めないのであれば、まずは英文会計の用語を押さえ、「対前年10%増加」とか英語ではどういうのか(increase by 10 % year-on-year)、等まさに仕事に直結する英語の習得が必要ですよね。
ただでさえ、経理パーソンは業務が忙しいうえ、税制や会計基準の改正点も押さえないといけないなど勉強することがたくさんあるわけですので、英語にそれほど時間をかけられないわけです。
そうすると効率よく、学習範囲を限定しなければなりません。
なにも「英語の達人」になる必要はなく、仕事ができればよいのです。
自分の担当する仕事のターゲットをまずは明確にして、それをマスターすればいいのです。それができるようになってから、その先は、いろいろ幅を広げていけばいいわけです。

まだ英文会計に不慣れな方であれば、 会計の知識を英語で学んではいかがでしょうか。
たとえば、IFRS(国際財務報告基準)について英語で学ぶ、IFRS基準での会計 知識を問われるBATIC(国際会計検定)を学習 すること により、IFRS そのものについて学びながら英語力をつけ、そして仕事 にも直結します。
さらにUSCPA(米国公認会計士)の資格にチャレンジするということにもつながっていきます。

下又

今青山先生がご指摘された「範囲を明確にする」という点はすごく重要なポイントです。
何も全員が完璧を目指す必要はありませんし、実際に無理です。また、日本人がなぜ英語を話せないのか、ということを考えると、理由は英語習得に対するアプローチが目的にかなっていないという結論にたどり着きます。

テスト対策の勉強などいわゆる「英語学習」と実際に仕事で話せるようになる「英語習得」に必要なアプローチは異なります。
その点に気づかず、「英語学習」の山だけを究めようとすると「英語習得」の山に登ることがなおざりになってしまいます。

TOEIC990点を取得しても話せるようにならないのは、上る山を間違えてしまっているからではないでしょうか?日本人は完璧主義で、国際会議に参加しても文法を含めた正しいセンテンスを頭の中で作ってから話を始めようとします。しかし、考えて黙っている間に会議の話題は別のことに移ってしまいます。完璧を目指して黙って考えるのではなく、まずは何か口に出すことです。

「3秒ルール」と言われるものがあります。話題を他の人にさわられないために、まずは主語と動詞を先に口に出してしまう。細かい表現がわからなければ、言いながら、あるいは言った後で考えていく。そうすれば相手が耳を傾け、「それはどういうこと?」と質問を挟んでくれることもあります。このように相手とのインタラクションを通じて、コミュニケーションを前に進めていく努力が必要です。

おすすめするレアジョブ英会話の活用法について

安島

最後に、経理担当者におすすめするレアジョブ英会話の活用法を教えてください。

青山

さきほど下又さんがおっしゃった「話せる環境」を強制的に作ってくれるという点でレアジョブ英会話は大いに活用できるのではないかと思います。
私が外資系企業に移り英語学習に取り組んだころはオンライン英会話といったサービスはありませんでした。今はオンラインで英語を話す機会を気軽に持つことができます。

今後経理担当者は英語を読んだり書いたりするだけではなく、現地の経理担当者と話すなどのコミュニケーションをとる機会がどんどん増えていくと思います。そのような機会に向けて、話すトレーニングをぜひ積んでいくとよいでしょう。

下又

先ほどご紹介した「英語学習」ではなく「英語習得」の山を登るために最も理想的なのは、自分の言語環境を長期間に渡って100%英語にすることができる「留学」でしょう。その次はある程度の期間英語漬けになれる「イマージョンレッスン」ではないでしょうか。
しかし、いずれも費用が非常に高価ですし、会社を長期で休まなければならない等の問題もあるため、多くの社会人にとっては難しいのが現状です。そのような場合、低価格で、毎日気軽に話せるレアジョブ英会話を是非ご活用頂ければと思います。

レアジョブ英会話では講師の専門性や出身学科など、自分が学びたい、話したい話題に合わせた講師を選択してレッスンを受講することができます。
経理担当者の場合、会計学科出身の講師や経理の仕事をしている講師とは専門的な話題ができるのではないでしょうか。安価で本格的なレッスンに取り組めるレアジョブ英会話を活用し、ぜひ「自宅留学」を実現してもらえればと思います。